豆知識
「メーカーから部品供給停止の通知が届いたが、すぐにリニューアルしなければならないのか」「まだ動いているエレベーターを、このまま使ってよいのか」と迷う建物所有者・管理者の方もいるでしょう。
部品供給停止の通知が届いても、通知だけで対応方法が決まるわけではありません。
まず確かめたいのは、自分のエレベーターが通知の対象か、必要な部品を現在も調達できるか、不具合が起きた場合に修理できるかという3点です。
そのうえで設備の状態や建物の今後の使用予定、工事による停止の影響を見ながら、「現在の設備を維持しながら使用する」「必要な部分を更新する」「エレベーター全体をリニューアルする」の3つから対応を検討していきます。
目次
エレベーターの部品供給停止とは、メーカーが特定の機種などについて、保守や修理に使う部品の供給を終了することです。
部品供給停止の通知と、現在のエレベーターの設備状態は別の情報です。
通知の対象範囲と現在の保守・修理対応は、分けて見てください。
国土交通省の「昇降機の適切な維持管理に関する指針」では、販売終了後の部品供給について一律の年数を示さず、製造業者が昇降機の耐用年数を勘案して「適切な期間」供給するものとしています。
部品供給停止の対象や事情は、メーカーや機種によって異なります。
確認すべきなのは「メーカーの部品がすべてなくなるのか」ではなく、自分の機種について、どの範囲が告知の対象なのかです。
具体的な対象機種や供給終了時期は、各メーカーが公開している最新の告知で確かめてください。
メーカーから通知が届いたら、次の情報に目を通しておく必要があります。
通知の見出しだけを見て、エレベーター全体の部品供給が一度に終了すると判断するのは避けた方がよいでしょう。
メーカーによっては、その後に新しい告知が追加されることもあります。
手元の通知と公式サイトの最新情報を照合しておくと、見落としを防げます。
通知を受け取った後に押さえておきたいのは、メーカーの告知、自分のエレベーターの情報、これまでの整備履歴、現在の保守対応の4つです。
それぞれ、どこを見るのかを具体的に確認していきましょう。
最初に見るのは、通知を出したメーカーの公式サイトに掲載されている現在の告知です。
部品供給に関する情報は更新される可能性があるため、第三者が作成した過去の一覧ではなく、メーカー自身の公式告知で確認するのが基本です。
各メーカーの公式ページは、後半の「メーカー別の最新情報は公式告知で確認する」に掲載しています。
次に確認するのは、現在使っているエレベーターが告知の対象かどうかです。
メーカー名だけでは判断できません。
手元の通知や保守点検に関する資料などから、次の情報を確かめてください。
機種や型式が分からない場合は、現在の保守点検業者へ確認してください。
機種・型式が分かったら、次に見るのは、これまでの修理や部品交換、リニューアルの履歴です。
過去の作業報告書や定期検査報告書、リニューアルを行っている場合は工事資料などが確認の手がかりです。
すでに更新されている部分が分かれば、今回の供給停止と現在の設備との関係も把握できます。
国土交通省の指針では、所有者は、製造業者が作成した保守・点検に関する文書や建築確認・検査の関係図書などを昇降機の廃止まで、過去の作業報告書や定期検査報告書等の写しなどを3年以上保存するものとしています。
設備情報と履歴がそろったら、次に確認する相手は現在の保守点検業者です。
国土交通省の指針にある保守点検業者選定のチェックリストでも、「部品調達」が確認項目になっています。
また、保守点検業者が契約範囲を超える修理や機能更新が必要と判断した場合は、その理由などを文書等で所有者へ十分に説明することも同指針で示されています。
更新を提案された場合は、「なぜ必要なのか」まで聞いておくと、判断の根拠が明確です。
保守契約の種類や費用については、エレベーター保守費用の記事で詳しく解説しています。
ここまでの確認内容によって、今後取り得る対応も変わります。
選択肢は「現在の設備を維持しながら使用する」「必要な部分を更新する」「エレベーター全体をリニューアルする」の3つです。
必要な部品を調達でき、保守点検業者による修理対応を続けられる場合は、現在の設備を維持しながら使用することも選択肢になります。
ただし、実際に不具合が起きている場合は別です。
国土交通省の指針では、所有者が昇降機に不具合が発生したことを把握した場合、速やかに使用中止その他の必要な措置を講じるか、保守点検業者にその措置を講じさせるものとしています。
また、建築基準法第12条第3項の定期報告の対象となるエレベーターでは、所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)が、昇降機等検査員などの資格者に定期に検査させ、その結果を特定行政庁に報告します。
出典:国土交通省「昇降機(エレベーター、エスカレーター等)について」
供給停止の対象や設備の状態によっては、エレベーター全体ではなく、今後の維持管理に関係する部分だけを更新する方法もあります。
更新工事の内容によっては、建築確認が必要です。
日本建築設備・昇降機センターは、確認申請を必要とするエレベーターの改修等では現行法令への適合が求められると説明しています。
エレベーターの安全装置に関する現行基準には、戸開走行保護装置(UCMP)や地震時管制運転装置があります。
戸開走行保護装置は、戸が開いたままかごが走行した場合などに、かごを自動的に制止させる装置です。
地震時管制運転装置は、地震などによる一定の揺れを検知すると、かごを乗り場の位置に停止させ、戸を開く、またはかご内から戸を開けられるようにします。
具体的な適用は工事内容やエレベーターの仕様などによって異なるため、更新を検討するときは、工事を依頼する事業者に建築確認の要否と、それに伴って必要になる装置をあわせて確認しておきましょう。
出典:日本建築設備・昇降機センター「エレベーターの定期検査と『既存不適格』について」
2009年9月28日より前に設置されたエレベーターには戸開走行保護装置の設置義務はありませんが、国土交通省は既設エレベーターへの取り付けを推奨しています。
建築基準法第12条に基づく定期検査の対象となるエレベーターで、戸開走行保護装置が設けられていない場合は、定期検査の判定が「要是正(既存不適格)」となります。
既存不適格とは、直ちに現在の使用が法令違反になるという意味ではなく、建築後の法改正などによって現行基準に適合しなくなった状態です。
出典:国土交通省「平成21年9月より前に設置されたエレベーターにも『戸開走行保護装置』を取り付けましょう」
出典:日本建築設備・昇降機センター「エレベーターの定期検査と『既存不適格』について」
修理費用については、エレベーター修理費用の記事で解説しています。
今後の部品調達や修理対応だけでなく、設備全体の状態も含めて更新を考える場合は、エレベーター全体のリニューアルまで視野に入ります。
複数の箇所で更新を検討する必要がある場合や、建物を今後も長く使用する予定がある場合などは、必要な部分だけを更新する案と、エレベーター全体をリニューアルする案をあわせて検討できます。
経過年数だけでは決まりません。
現在の設備状態や使用頻度、建物の今後の計画も判断に関わります。
国土交通省の指針でも、所有者は建物の維持管理計画等に昇降機に関する事項を盛り込み、使用頻度や劣化状況などを踏まえて必要に応じて見直すものとしています。
3つの選択肢を比べるときは、部品と修理の状況、設備の状態、建物の今後、工事中の停止影響の4つに分けて考えます。
前の章で確認した部品調達と修理対応の状況は、今後の対応を選ぶ材料になります。
必要な部品を調達でき、修理対応を続けられる状態なのか。
それとも、今後の維持管理を考えて必要な部分の更新やエレベーター全体のリニューアルまで検討した方がよいのか。
保守点検業者から受けた説明とあわせて整理した内容が、次の対応を選ぶ根拠になります。
在庫の有無だけでは足りません。
今後の調達先と修理できる範囲まで確認した情報をもとに判断します。
部品供給の状況とは別に、現在の設備状態も見ておきましょう。
定期検査報告書が手元にある場合は、検査結果の判定も確認の手がかりです。
日本建築設備・昇降機センターの資料では、定期検査報告書の判定基準を次の3つに分けています。
| 判定 | 確認の意味 |
|---|---|
| 要是正 | 修理や部品の交換等により是正することが必要な状態 |
| 要重点点検 | 次回の検査までに「要是正」に至るおそれが高く、重点的な点検が必要な状態 |
| 指摘なし | 要重点点検及び要是正に該当しない良好な状態 |
※建築後の法改正などによって現行の基準に適合しなくなった項目は、「要是正(既存不適格)」と判定されます。直ちに現在の使用が法令違反になるという意味ではありません。
部品供給に関する情報と現在の設備状態を分けて確認すると、今後どこまで対応するかを整理しやすくなります。
出典:日本建築設備・昇降機センター「エレベーターの定期検査と『既存不適格』について」
エレベーターだけでなく、建物そのものを今後どう使うかも見逃せません。
今後も長く使用する予定なのか、建物全体の大規模改修を予定しているのかによって、エレベーターにどこまで手を入れるかは変わります。
エレベーター全体をリニューアルする場合は、建物全体の修繕計画や設備更新の時期とあわせて検討すると判断しやすくなります。
必要な部分を更新する場合やエレベーター全体をリニューアルする場合は、工事内容に応じた停止時間も考慮が必要です。
工事方法を比べるときは、次のような建物運用への影響も見落とせません。
国土交通省の維持管理指針でも、所有者は保守点検業者が修理等を行う際に、必要な作業時間とエレベーターの停止時間を確保するものとしています。
設備の対応方法だけでなく、「いつ、どのくらい止められるか」も選定に影響します。
部品供給停止に関する最新情報は、メーカーの公式サイトで確かめるのが確実です。
2026年9月14日時点で、次の3社について公式の告知ページを確認できました。
対象機種・供給終了時期・在庫状況はここでは転記していません。
| メーカー | 公式告知 |
|---|---|
| 東芝エレベータ株式会社 | 保守部品供給終了のお知らせ |
| 株式会社日立ビルシステム | 昇降機の部品供給停止のお知らせ |
| 三菱電機ビルソリューションズ株式会社 | エレベーター・エスカレーター保守部品について |
部品供給に関する情報は、対象機種の追加などによって更新されることがあります。
そのため、確認する時点で各メーカーの公式ページを見ることで、現在公開されている情報を確認できます。
保守点検業者へ相談するときは、ここまで確認した内容を手元にまとめておきましょう。
用意できる範囲で、次の資料と情報をそろえてください。
国土交通省の指針では、所有者が保守点検業者に、製造業者が作成した保守・点検資料、建築確認・検査の関係図書、過去の作業報告書、定期検査報告書などを閲覧させ、または貸与する考え方が示されています。
エレベーターの部品供給停止通知が届いたら、まずは通知の対象と自分のエレベーターを照合し、部品調達や修理対応、現在の設備状態を確かめてください。
その結果と建物の今後の使用予定、工事による停止の影響を踏まえて、「現在の設備を維持しながら使用する」「必要な部分を更新する」「エレベーター全体をリニューアルする」のどこまで対応するかを決めていきます。
アイニチでは、さまざまなメーカー・機種のエレベーターについて、メンテナンスやリニューアルの相談に対応しています。
部品供給停止の通知を受け取り、「自分の設備が対象なのか分からない」「どこまで更新を検討すればよいのか整理したい」といった場合は、通知や設備資料をご用意のうえ、ご相談ください。
当社スタッフがお客様の昇降機(エレベーター・簡易リフト・小荷物専用昇降機)の状況(使用年数、故障箇所、不具合)等を伺い、必要であればリニューアル・部品交換も視野に入れた最善策をご提案いたします。
アイニチは、仙台・千葉・埼玉・東京・神奈川・名古屋・大阪・岡山・福岡の全国9箇所の拠点だけでなく、専門会社とパートナーシップを結び、全国すべての都道府県をカバーしています。(一部離島を除く)全国どこでも迅速な対応が可能です。
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