豆知識
保守会社から届いた契約更新の案内や突然の値上げ通知を見て、「毎月引き落とされているこの点検費用、本当に妥当な金額なんだろうか……」と立ち止まってしまったことはありませんか。
管理組合の理事会やオーナー会議で話題にしようにも、「そもそも世間の相場っていくらくらいなの?」と聞かれたときに比べる基準が手元にないと、届いた見積書の前で判断が止まってしまいますよね。
実際のところ、国が全国一律の保守点検料金を示した公的統計は、今回調べた範囲では確認できませんでした。
だからこそ、ネット上の出所不明な「格安」「相場〇万円」といったキャッチコピーに惑わされてしまいがちです。
ですが、安心してください。
金額の妥当性を確かめるときに見るべき「契約の条件」や「見積書の記載項目」は、国土交通省が定めた標準契約書と指針の中にきちんと整理されています。
この記事では、契約書や見積書のどこに目を向ければ適正な価格や範囲が見極められるのか、そしていつまでにどのような手順で動けばトラブルなく見直しが間に合うのかを、実務の流れに沿って分かりやすく紐解いていきます。
取り上げるのは、保守点検費用の決まり方と契約の見直し手順です。
点検の頻度や法律上の義務はエレベーター保守点検の頻度と法的義務で解説しています。
目次
エレベーターの保守点検費用を比べるときに判断の土台となるのは、「契約方式(POGかフルメンテナンスか)」「頼む業務の範囲」「エレベーター自体の仕様(構造や制御方式)」という3つの条件です。
ネットで見かける単純な金額表だけを眺めていても、ご自身の建物の条件に当てはまるかどうかは判断できません。
国土交通省が2009年に保守会社へ実施した実態調査でも、各社の保守管理台数やフルメンテナンス/POG契約の台数といった基礎データすら「非公開」とされています(同省「エレベーターの保守管理等に関する実態調査の結果について」)。
そこで客観的な基準として頼りになるのが、国土交通省の「エレベーター保守・点検業務標準契約書」(以下、標準契約書)と「昇降機の適切な維持管理に関する指針」(以下、指針)です。
契約方式の法的な定義から中途解約のルールに至るまで、この2つの公式文書に過不足なく整理されています。
この指針は、建築基準法 第8条第1項の趣旨と、同条第3項に基づく告示(昭和60年建設省告示第606号)を受けて国土交通省がまとめた文書です。
なお、以下で出てくる条番号は、すべて国が公表しているひな形(標準契約書)のものです。
実際の契約内容は会社ごとに異なりますので、必ずお手元の契約書の該当条項をご確認ください。
次の表は公的な統計ではなく、当社が確認した契約事例の参考価格帯です。
| 契約方式 | メーカー系保守会社 | 独立系保守会社 |
|---|---|---|
| POG契約 | 月額3万円~ | 月額1.5万円〜 |
| フルメンテナンス契約 | 月額4万円〜 | 月額3万円〜 |
※個別の仕様・契約範囲・基数により金額は異なります。
送られてきた見積書に「保守点検費 一式 〇〇円」とだけ書かれていると、「毎月支払っているこのお金で、どこまで面倒を見てくれるのか」が分からず不安になりますよね。
国土交通省の標準契約書 別表1(基ごとの仕様と金額を書く様式)を見ると、本来は次のような項目に細かく切り分けて記載される設計になっています。
あとから故障が起きたときに「これも月額に含まれていなくて別料金だったの?」と慌てないためにも、毎月の金額に含まれない業務や別途契約になる作業は、契約を結ぶ前にしっかり確かめておきたいところです。
なお参考までに、国の官庁施設で使われる建築保全業務費の場合は、直接人件費(労務数量×労務単価)・直接物品費・業務管理費・一般管理費等に区分して積算されています(同省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」)。
ただし、これはあくまで官庁施設向けの積算方法であり、民間のエレベーター保守料金の内訳や価格を示すものではありません。
出典: 別表1・第4条第3項・第8条・標準仕様書6(b)=国土交通省「エレベーター保守・点検業務標準契約書(標準仕様書・別表を含む)」/指針=同省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」(ともに平成28年2月19日公表・令和6年9月9日一部改訂・掲載元は同省「昇降機(エレベーター、エスカレーター等)について」)/官庁施設の積算区分=同省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」/建築基準法 第8条=e-Gov法令検索「建築基準法」
2つの契約方式を分ける最大のポイントは、部品の取り替えや修理費用までを月々の定額料金に含めるかどうかです。
国土交通省の標準契約書 第2条が両者を定義しており、プランの名前ではなく「どこまでが含まれるか」で選ぶ設計になっています。
POG契約は、Parts(部品)・Oil(油)・Grease(グリス)の頭文字を取った呼び名で、定期点検と消耗品の交換までをカバーする契約です。
国土交通省の標準契約書 第2条(4)では、別紙仕様書で定める消耗品を除き、劣化した部品の取替えや修理等を含まないと定義しています。
受託者が負担する消耗品は国土交通省の標準仕様書4.に列挙されており、カーボンコンタクト、フィンガー、回転カーボンブラシ、ヒューズ類、リード線、ランプ類、補充用油脂類、ウエスが対象です。
主ロープや制御基板のような高額部品の取り替えは、月額料金には含まれません。
フルメンテナンス契約(FM契約)は、消耗品だけでなく部品の修理・取り替えまでを月額料金に含める契約です。
国土交通省の標準仕様書 表2では、主ロープ・ブレーキシュー(ライニング)・インバータ/コンバータ・プリント基板・巻上機のギヤの取替えなどが、この契約のみの対象になります。
なお表2は一例として示されたもので、実際の範囲は契約ごとに定められます。
ただし、「フルメンテナンスだから、どんな修理も追加費用なしでやってくれる」という理解は誤りです。
国土交通省の標準仕様書5(b)は、契約の種別にかかわらず巻上機・電動機・制御盤等の一式取替え、ギヤケース・フレーム・キャビネットの取替え、油圧式の油タンク・圧力配管・プランジャー・シリンダーを対象外としています。
国土交通省の建築保全業務共通仕様書 令和5年版 7.2.2(b)も、ほぼ同じ範囲を対象外に掲げています。
2つの独立した国土交通省文書が同じ除外を定めている以上、特定の業者の都合で引かれた線引きとは言えません。
また、対象となるのも「通常使用する場合に生ずる摩耗及び損傷に限り」とされ、不注意や不適当な使用によるものは含みません(国土交通省の標準仕様書5(a)2))。
契約書を確認するときのポイント
【結論】
「フルメンテナンスだから安心」と契約名で判断せず、契約書の除外項目の欄を先に開いてください。
契約書に仕様書が添付されていないと、月額に含まれる取替えの範囲を書面から読み取れません。
大きな部品の取替え時期になって初めて範囲を確認することになれば、想定外の請求につながります。契約名ではなく範囲で比べてください。
| 区分 | フルメンテナンス契約 | POG契約 |
|---|---|---|
| 定期点検・調整、消耗品 | 対象 | 対象 |
| 主ロープ・ブレーキシュー・プリント基板の取替え | 対象 | 対象外 |
| 巻上機・電動機・制御盤の一式取替え | 契約種別を問わず対象外 | 契約種別を問わず対象外 |
※国土交通省の標準仕様書4.・5(b)・表2をもとにした一例です。実際の範囲は契約書・仕様書で確認してください。
契約方式を選ぶときは、毎月の差額だけで決めるのではなく、対象エレベーターの設置時期を把握する手掛かりとなる工事完了検査済証交付日(別表1の記載欄)をはじめ、過去の部品交換や故障の履歴、今後の交換見込み、日頃の稼働状況、「突発的な出費をどこまで許容できるか」、そして実際の契約範囲を照らし合わせながら判断していきます。
なお、工事完了検査済証交付日は対象エレベーターのものであり、建物の築年数とは一致しません。
国土交通省の標準契約書は基ごとに契約方式を記載する様式です。
1基は稼働が多く1基は予備という建物なら方式を分ける判断もできますが、同一建物内で方式を分けられるかは保守会社へ確認してください。
出典: 第2条・第2条(4)・標準仕様書4.・5(a)2)・5(b)・表2・別表1=国土交通省「エレベーター保守・点検業務標準契約書(標準仕様書・別表を含む)」/巻上機・電動機・制御盤等の一式取替えを契約の種別にかかわらず対象外とする定め=同省「建築保全業務共通仕様書 令和5年版」第7章 昇降機設備 7.2.2(b)(令和5年3月30日 国営保第27号・最終改定 令和5年11月8日 国営保第13号)
メーカー系と独立系を比べるときは、費用の安さだけでなく、技術情報の入手方法や部品の調達体制、不具合情報への対応もあわせて確認します。
2009年の実態調査は双方の回答を記録したもので、現在の価格差との因果関係を示す資料ではありません。
最初にお伝えしておきます。
当社は独立系の保守会社です。だからといって「独立系のほうが安いですよ」と言い切るつもりはありません。
金額差を裏づける公的な一次情報がないためです。
以下にご紹介するのは、国が両者の言い分を並べて記録した資料です。
メーカー系保守会社は、製造業者またはその系列会社が保守を担う形態です。
実態調査(2009年7月7日公表)には次の回答があります。
独立系保守会社は、製造業者の系列に属さず複数メーカーのエレベーターを保守する形態です。
同じ調査には、独立系側の回答も並びます。
この資料から見えてくるのは、同じテーマであっても双方の認識が食い違っているという現実です。
国がどちらの言い分を正しいと判定したわけではなく、2009年時点の調査である点も差し引いてお読みください。
系統そのものの違いはメーカー系と独立系の違いで扱っています。
「メーカー系だから」「独立系だから」と看板だけでひとくくりにするより、同じ質問を両方に投げて答えを並べるほうが確実です。
国土交通省の指針 別表2(業者選定の確認項目)から、費用と契約に関わる7項目を抜き出しました。
| # | 確認項目(指針 別表2) | 見積比較でここが効く |
|---|---|---|
| 1 | 契約方式(フルメンテナンス/POG/その他) | 月額の前提がそろう |
| 2 | 業務仕様書の添付と、点検項目・頻度の記載 | 金額差が範囲差か判別できる |
| 3 | 遠隔監視・遠隔点検装置の活用の有無 | 点検周期と通信費に効く |
| 4 | 法定の定期検査の実施の有無 | 二重計上・計上漏れを防げる |
| 5 | 作業報告書の提出時期(点検毎/1月毎) | 実施の裏づけを取れる |
| 6 | 部品の在庫・調達先の確保状況 | 修理時の待ち時間と費用に効く |
| 7 | 技術情報の入手方法 | 対象機種に対応できるか分かる |
最初からどちらが優れているかを決めつけず、同じ様式で並べたうえで、書面での回答を求めてみてください。
出典: メーカー系・独立系双方の回答=国土交通省住宅局建築指導課「「エレベーターの保守管理等に関する実態調査」の結果について」(2009年7月7日公表)/確認項目7点の抜き出し元=同省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」別表2
同じ1基のエレベーターであっても、駆動方式や付加装置、遠隔点検の有無、作業を行う時間帯によって費用は変わってきます。
国土交通省の標準契約書が基ごとに条件を細かく書き分ける様式になっているのも、建物ごとにそうした違いがあるためです。
国土交通省の標準仕様書2(a)は、保守・点検の項目をロープ式(リレー制御)/ロープ式(マイコン制御)/油圧式/機械室なしの4区分に分け、適用する点検表を変えています。
非常用エレベーターなら非常用の点検項目が加わります。
付加装置の有無も金額を動かします。
国土交通省の標準契約書 別表2は、その基に付いている付加装置を書き出す記入様式で、装置名は印字されていません。
装置名の例は国土交通省の標準仕様書 表2の「付加装置」の区分にあり、地震時管制運転装置、停電時自動着床装置、戸開走行保護装置(UCMP。かごの戸が開いたまま動き出すのを防ぐ装置)、かご内防犯カメラ、かご内クーラーなどが挙がっています。
ただし国土交通省の標準仕様書 表2で付加装置に付く印は△=特記により実施する項目です。
地震時管制運転装置と停電時自動着床装置は特記すればフルメンテナンス契約の対象、戸開走行保護装置は特記すればどちらの契約種別でも対象になります。
一方でかご内防犯カメラとかご内クーラーは、標準仕様書 表2上どちらの契約種別でも対象外です。
装置が多い基ほど、契約に含めるかどうかを1つずつ決める必要が出ます。
これらの点検は、一般には専門の保守点検業者へ委託します。
国土交通省の指針では、所有者が自ら適切に保守・点検を行う場合を除き、必要な知識・技術力を有する保守点検業者を選定する考え方が示されています。
見積金額に開きがある場合、契約範囲の違いが含まれている可能性があります。
とくに効くのが、遠隔監視(機器の異常を離れた場所で常時見守る仕組み)と遠隔点検(現地に行かずに機器の状態を確認する点検)を契約に入れているかどうかです。
国土交通省の標準契約書は、この2つを別々の項目として扱います。
国土交通省の標準仕様書2(c)は、遠隔点検を実施しない場合は点検周期A、実施する場合は点検周期Bを適用すると定めています。
現地に出向く周期が変わるため、月額の前提そのものが変わります。
ただし対象は表1.1(b)・1.2・1.3、つまりマイコン制御のロープ式・油圧式・機械室なしで、リレー制御のロープ式には周期A・Bの切替えが適用されません。
さらに国土交通省の標準契約書 別表1では、遠隔監視・遠隔点検に必要な通信費を委託者と受託者のどちらが負担するかを選びます。
| 確認項目 | 契約書で見る点 |
|---|---|
| 遠隔監視 | 有無 |
| 遠隔点検 | 有無 |
| 点検周期 | 対象方式では、遠隔点検の有無に応じて周期A/Bを確認 |
| 通信費 | 遠隔監視・遠隔点検に必要な費用を委託者と受託者のどちらが負担するか |
※標準契約書 別表1・第4条第4項・標準仕様書2(c)をもとに当社が整理
たとえ遠隔点検を契約に入れていなくても、遠隔監視があれば通信回線を使う可能性があります。
同じ月額の見積であっても、これらの欄が違えば実質の負担は変わります。
お手元の別表1で、遠隔監視・遠隔点検の有無と通信費の負担者の欄をご覧ください。
もちろん、作業を行う時間帯も費用を左右するポイントです(国土交通省の標準契約書 第8条・時間外と休日の作業費は別途協議)。
出典: 標準仕様書2(a)・2(c)・表1.1(b)・1.2・1.3・表2、標準契約書 別表1・別表2・第4条第4項・第8条=国土交通省「エレベーター保守・点検業務標準契約書(標準仕様書・別表を含む)」/保守点検業者を選定する考え方=同省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」
ここでお伝えするのは、費用が必ず下がることを保証するものではなく、契約条件をそろえて適合性と総費用を見直すためのステップです。
最初に着手すべきなのは、金額の交渉ではなく「解約期限の日付」です。
国土交通省の標準契約書 第20条は、有効期間が満了する日の少なくとも90日前までに書面で解約を申し入れない限り、契約は1年間自動更新されると定めています。
もっとも、うっかり更新月を過ぎてしまったとしても手はあります。国土交通省の標準契約書 第17条第3項は、契約期間の途中でも90日前に書面で申し入れれば契約を終了でき、受託者は損害賠償を請求できない旨を定めています。
申し入れができるのは委託者(建物側)に限られる片務的な規定で、これもひな形の条文です。
お手元の契約書に同趣旨の条項があるかを必ずご確認ください。
以下は、国土交通省の標準契約書を基準にした見直しスケジュール例です。
120日前・60日前は当社が提案する準備時期であり、実際の解約期限や自動更新条件は現在の契約書を優先してください。
| 満了日からの逆算 | 建物の所有者・管理者が進めること |
|---|---|
| 120日前まで | 現契約の内容と費用を確認し、方針を決める |
| 90日前まで | 標準契約書と同じ条件の場合、継続しない旨を書面で申し入れる |
| 60日前まで | 相見積もりを比較し、次の契約先と業務仕様書を確定する |
出典: 第20条(契約の自動更新と解約の申入れ)・第17条第3項(委託者からの中途解約)=国土交通省「エレベーター保守・点検業務標準契約書」
最初は、いま結んでいる契約書の棚卸しから始めます。
国土交通省の指針 別表3(契約書に明示されるべき7分類19項目)を1項目ずつ照合してください。
費用に直結するのは、契約方式、保守・点検の項目と頻度、遠隔監視・点検装置の活用、法定の定期検査の実施、契約に含まれる部品の修理や交換の範囲、契約期間・更新方法・解約方法です。
もし保守会社から値上げを提示されている場合も、条文を確認すれば落ち着いて対応できます。
国土交通省の標準契約書 第21条は、諸材料の価格や労務費等の変動で委託業務費を変更する必要が生じたとき、協議のうえ契約を変更できると定めています。
国の標準契約書では、一方的な変更ではなく協議事項です。実際の契約書の価格改定条項を確認し、変更理由と条件の説明を求めましょう。
背景として、令和8年度の建築保全業務労務単価は全国・全職種平均19,540円、前年度比8.5%上昇で14年連続の上昇です(2026年2月17日公表)。
ただし官庁施設の積算に使う参考単価で、民間の保守料金への換算には使えません。
出典: 別表3(契約書に明示されるべき7分類19項目)=国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」/第21条(委託業務費の変更は協議事項)=同省「エレベーター保守・点検業務標準契約書」/建築保全業務労務単価=同省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」(2026年2月17日公表)
いまの契約方式が建物の利用実態に合っているかを確かめます。
判断の軸となるのは、国土交通省の標準契約書 別表1の工事完了検査済証交付日から見た対象エレベーターの経過年数、部品取替えの実績と今後の見込み、稼働状況と付加装置の数、遠隔点検を続けるか、突発的な支出をどこまで許容できるかです。
設置から間もない基や取替え実績が少ない基でも、POG契約が有利とは限りません。
切り替えると、主ロープや制御基板の取替えは都度の見積になります。
フルメンテナンス契約とPOG契約それぞれの月額に、将来見込まれる取替え費用を足した総費用で比べてください。
予算を平準化したいか、突発的な支出を許容できるかも判断材料になります。
切り替えれば必ず安くなるとは申し上げません。
検討は「安いか」ではなく「同じ契約範囲で比べられるか」から始めます。
国土交通省の指針 第三章第1は、業者の選定を次のように定めています。
「所有者は、保守点検業者の選定に当たって、価格のみによって決定するのではなく、必要とする情報の提供を保守点検業者に求め、専門技術者の能力、同型又は類似の昇降機の業務実績その他の業務遂行能力等を総合的に評価するものとする。」 — 国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」第三章第1
先ほどの国土交通省の指針 別表2の7項目を、いまの会社と候補の会社の両方へ同じ様式で聞いてみてください。
相見積もりで差がつくのは、比較できる状態を作れたかです。
依頼時に次の4点をそろえてください。
条件をそろえて初めて、残った差額が範囲の差か単価の差かをその場で判定できます。
| 建物の条件(仮) | 見直し前(仮) | 見直し後(仮) | 主な変更点(仮) |
|---|---|---|---|
| 事務所ビル・2基 | 月額◯万円〜 | 月額◯万円〜 | 契約方式と法定検査の委託範囲の整理 |
| 共同住宅・1基 | 月額◯万円〜 | 月額◯万円〜 | 遠隔点検の有無と通信費負担者の見直し |
※実例の掲載にあたり、建物が特定される情報(所在地・物件名・築年数)は記載しません。
お手元の契約書を見ながら、判断に迷う点をご相談ください。
別表1の遠隔監視・遠隔点検・通信費の欄から、別表3の7分類19項目のうち書かれていない項目まで、当社が一緒に確認します。
選定の基準について、国土交通省の指針は「価格のみによって決定するのではなく」総合的に評価するものと定めています。
ここでは費用と契約の観点に絞ります。
費用の観点でいう対応力とは、対応にかかる費用の条件が書面で決まっているかです。
作業報告書の提出時期(点検毎か1月毎か)、時間外・休日に呼んだ場合の作業費、緊急対応が月額に含まれるか都度請求かの3点を押さえておきましょう。
作業報告書がないと、実施内容や不具合への対応状況を所有者側で確認しにくくなります。
費用の観点で技術力を見るときは、対象の機種を通常の費用で扱えるかを確認します。
国土交通省の指針 別表2でいえば、部品の在庫・調達先の確保状況、技術情報の入手方法、同型または類似の昇降機の業務実績です。
部品の調達条件は、修理費用や復旧までの時間に影響する可能性があります。
口頭の「対応可能です」ではなく、調達先と実績を書面で確認してください。
なお定期検査報告を委託する場合は、昇降機等検査員などの有資格者が担当します。
最後は契約書そのものです。
STEP1で挙げた項目に加えて、免責条項や賠償義務、再委託の制限が書かれているかどうかも見ておきましょう。
金額に含まれない責任がどちらにあるかで、後の請求額が変わります。
国土交通省の指針 第四章2は、仕様書に点検の項目・頻度、部品の修理や交換の範囲、緊急時対応の技術的細目が規定されるべきものと位置づけています。
業務仕様書が添付されていない見積書は、提出を依頼してから比較に進んでください。
出典: 指針 第三章第1(価格のみによって決定しない総合的な評価)・別表2・第四章2=国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」
保守点検費用についてよくいただく4つの質問に、公的資料をもとにお答えします。
マンションでも、費用を比較するときに契約方式・委託範囲・仕様を確認する考え方は同じです。
ただし、解約期限や自動更新条件は契約ごとに異なります。
国の標準契約書では満了90日前を基準にしていますが、実際の契約書を確認してください。
特有の事情は、契約の変更に管理組合の合意形成が要ることです。
解約期限に間に合わせるには、逆算して総会の議題に載せておく必要があります。
指針 第二章第6第4項も、共同住宅の長期修繕計画に昇降機に関する事項を盛り込み、使用頻度や劣化の状況を踏まえて見直すものとしています。
毎月の保守点検費用と、将来の更新・改修にかかる工事費は性質の違う支出です。
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定・令和6年6月改定)が対象とするのは修繕工事費であり、日常の保守点検費用の目安には使えません。
総会資料では2つを分けて示してください。
契約によって異なります。「含まれるのが普通」でも「別途が普通」でもなく、契約ごとに選ぶ項目です。
国土交通省の指針 別表2には「法定の定期検査の実施」の確認欄があり、国土交通省の標準契約書 別表1にも「法定検査等の委託」の欄があります。
国土交通省の標準契約書 第4条第2項は、契約時に含まれない場合でも後日委託者が依頼でき、費用と支払方法は協議のうえ別途定めるとしています。
参考として、東京都福生市の入札見積経過調書(2025年3月11日開札分・令和7年度契約分)を見ると、昇降機の保守委託は11件あり、そのうち定期検査を業務内容に明記し基数が判明する3件では、税抜の年額から換算して1基あたり月額5万円〜(5.0万〜6.7万円)でした(遠隔監視や定期整備を含む条件。契約種別は調書に記載がありません)。
これは自治体発注の一例であり、民間の相場ではありません。見積書では費目欄まで必ず目を通してください。
出典: 別表1「法定検査等の委託」・第4条第2項=国土交通省「エレベーター保守・点検業務標準契約書」/別表2「法定の定期検査の実施」=同省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」
国土交通省の指針では、製造業者には販売終了後も耐用年数を勘案した適切な期間、部品等を供給する責任があると整理されています。
また、国土交通省の標準仕様書は保守点検業者に部品の十分なストックと安定供給への努力を求めています。
ただし、個別の部品の調達可否・納期を保証するものではありません。
一方で2009年の実態調査では、部品提供までの所要時間と価格について双方の認識に差があったことも記録されました。
制度と実務のあいだに開きがある論点です。
なお公正取引委員会「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」(2009年10月28日策定・2020年12月25日最終改正)は、独立系業者と契約するビル所有者への部品の単体販売を拒んだ行為が不公正な取引方法(独占禁止法第19条)に当たるとされた裁判例(大阪高判平成5年7月30日)を、「抱き合わせ」の参考例として挙げています。
1993年の判断であって、個別の会社の現在の行為を評価したものではない点にご注意ください。
部品を確保できるかどうかは、系統ではなく対象機種ごとの調達先と実績で判断してください。
出典: 製造業者の部品供給に関する整理=国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」/部品のストックと安定供給への努力=同省「エレベーター保守・点検業務標準契約書」標準仕様書/部品提供の所要時間と価格に関する双方の回答=同省「「エレベーターの保守管理等に関する実態調査」の結果について」
見積書と業務仕様書をお渡しした時点で、判断はお客様にお任せします。
現地を見て見積を出すことは、選定プロセスの正規の手順です。
国土交通省の指針 第三章第2は、所有者が業務の内容を提示し、可能な限り昇降機を目視で確認する機会を提供するよう求めています。
複数社へ同じ条件で現地確認と見積を依頼する進め方は、指針が想定しているものです。
出典: 指針 第三章第2(業務の内容の提示と目視で確認する機会の提供)=国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」
エレベーターの保守点検費用は、出所不明な相場表ではなく契約書で判断できます。
自分の契約条件を国の標準契約書と突き合わせるのが、いちばん確実な検証方法です。
要点は次の5つです。
補助金や助成制度は、対象も時期も自治体ごとに大きく異なります。
所在地の自治体窓口でご確認ください。点検の頻度や法律上の義務は別記事「エレベーター保守点検の頻度と法的義務」で扱っています。
保守契約の見直しは、まず現在の契約書で解約期限を確認し、余裕をもって始めてください。
お手元の契約書と見積書を見ながら、確認したい箇所をご相談ください。
当社スタッフがお客様の昇降機(エレベーター・簡易リフト・小荷物専用昇降機)の状況(使用年数、故障箇所、不具合)等を伺い、必要であればリニューアル・部品交換も視野に入れた最善策をご提案いたします。
アイニチは、仙台・千葉・埼玉・東京・神奈川・名古屋・大阪・岡山・福岡の全国9箇所の拠点だけでなく、専門会社とパートナーシップを結び、全国すべての都道府県をカバーしています。(一部離島を除く)全国どこでも迅速な対応が可能です。
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