エレベーターの維持管理を検討するとき、「どの契約プランが最適なのか？」という問題に頭を悩ませたことはありませんか？エレベーターは建物の重要な設備であり、日々の安全性と快適さを保つためには、適切なメンテナンスが欠かせません。

しかし、メンテナンス契約にはいくつかの種類があり、その中でも「POG契約（パーツ・オイル・グリス契約）」と「FM契約 （フルメンテナンス契約）」の違いがよく議論されます。
「名前は聞いたことがあるけれど、実際には何がどう違うのか分からない」「コストはどちらが安いの？」「本当に自分の建物に合った契約を選べているのだろうか？」こうした疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

間違った選択をしてしまうと、後から高額な費用が発生したり、想定外のトラブルに見舞われる可能性もあります。だからこそ、各契約の特徴やメリット・デメリットをしっかり理解しておくことが重要です。

この記事では、「POG契約」と「FM契約」の違いをわかりやすく解説し、それぞれのメリット・デメリットについて具体的に掘り下げていきます。さらに、どちらの契約を選ぶべきか迷っている方のために、最適な判断をするためのポイントもお伝えします。これを読めば、あなたの建物に最適な契約を選ぶためのヒントが見つかるはずです！

POG契約（パーツ・オイル・グリス契約）とは？

POG契約（パーツ・オイル・グリス契約）とは、エレベーターの保守契約の一種で、定期的な点検や部品交換、オイル・グリスの補充など、エレベーターの基本的なメンテナンスを行う契約のことです。

「POG」とは、それぞれ「Parts（部品）」、「Oil（オイル）」、「Grease（グリス）」の頭文字を取ったものです。これらの消耗品を定期的に交換・補充することが、POG契約の主な内容となります。

POG契約に含まれるもの

POG契約では、エレベーターの安全な運行を維持するための基本的なサービスが提供されます。具体的には、以下のような項目が含まれています。

• 定期的な点検作業（月1回程度）
  • 各種センサーの動作確認
  • 安全装置の点検
  • 制御盤の点検
• 消耗品の交換や補充
  • 各種オイルの補充
  • グリスの補充
  • 軸受け部分の潤滑剤補充
• 簡単な調整・修理
  • 通常の使用で発生する軽微な不具合の調整

POG契約に含まれないもの

POG契約では、以下のような項目は保守範囲外となり、別途費用が必要となります。

• 部品の交換作業
  • ワイヤーロープの交換
  • 制御基板の交換
  • モーターの交換
• 故障時の修理作業
• 大規模な改修工事

FM契約（フルメンテナンス契約）とは？

FM契約 （フルメンテナンス契約）とは、エレベーターの保守契約の一種で、定期的な点検や部品交換、オイル・グリスの補充に加え、修理や部品交換費用も月額料金に含まれる契約のことです。

FM契約は、突発的な故障や修理費用を気にせず、安定したエレベーターの利用を求める場合に適しています。

FM契約に含まれるもの

FM契約では、エレベーターの保守に関する幅広いサービスが提供されます。具体的には以下のような項目が含まれています。

• POG契約と同様の定期点検作業
• 消耗品の補充
• 部品の交換作業（一部除外品あり）
• 故障時の修理作業
• 突発的な故障に対する緊急対応

FM契約に含まれないもの

FM契約でも、以下のような項目は保守範囲外となります。

• 大規模な改修工事
• 地震や火災などの自然災害による故障修理
• 利用者の過失による故障修理
• 特定の高額部品の交換

POG契約とFM契約の違い

エレベーターの保守契約には、大きく分けてPOG契約とFM契約の2種類があります。どちらの契約を選ぶべきかは、エレベーターの使用状況や建物の築年数、予算などによって異なります。ここでは、それぞれの契約の違いについて詳しく見ていきましょう。

保守範囲の違い

POG契約（パーツ・オイル・グリス契約）は、定期的な点検や消耗品の交換が主な内容です。具体的には、オイルやグリスの補充、パッキンなどの消耗品の交換などが含まれます。しかし、故障時の修理や部品交換は別途費用が発生します。

一方、FM契約（フルメンテナンス契約）は、定期的な点検に加えて、故障時の修理や部品交換費用も月額料金に含まれます。つまり、FM契約に加入していれば、突発的な故障が発生しても追加費用を支払う必要はありません。

項目	POG契約	FM契約
定期点検	〇	〇
消耗品交換	〇	〇
修理費用	別途	月額料金に含む
部品交換費用	別途	月額料金に含む

費用（料金）の違い

POG契約とFM契約では、月々の費用の負担にも大きな違いがあります。

契約タイプ	月額料金	突発的な修理費用
POG契約	安い	故障時は別途支払い
FM契約	高い	故障時の修理費込み

POG契約は、FM契約に比べて月々の支払いを抑えられるのが特徴です。しかし、契約範囲外の修理が必要になった場合、その都度高額な修理費が発生する可能性があります。特に、エレベーターの老朽化が進むと、突発的な修理費用が増えてしまうリスクがあります。

一方、FM契約は毎月の費用は高めですが、故障時の修理や部品交換が契約に含まれているため、追加費用が発生しにくいのがメリットです。特に、使用頻度が高いエレベーターや、故障時のコストを抑えたい場合には、FM契約が向いています。

どちらの契約を選ぶべきかは、上記の表や説明を参考に、建物の状況や予算などを考慮して判断しましょう。

POG契約のメリット・デメリット

POG契約は、最低限のメンテナンスを受けながらコストを抑えられる契約ですが、一方でデメリットもあります。ここでは、POG契約のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

POG契約のメリット

POG契約には、主に以下のメリットがあります。

月々の費用を抑えられる

POG契約の最大のメリットは、月々の支払いを安く抑えられることです。

POG契約では、定期点検や消耗品の交換が含まれているため、エレベーターの基本的なメンテナンスを低コストで受けることができます。予算を抑えながら、最低限のメンテナンスをしたい場合に適した契約です。

また、エレベーターの状態が良好で、故障がほとんど発生しない場合は、POG契約の方が長期的なコストを抑えられる可能性があります。

POG契約のデメリット

POG契約には、主に以下のデメリットがあります。

修理・部品交換費用が別途必要

POG契約には、故障時の修理費用や部品交換費用が含まれていません。

そのため、エレベーターの主要部品が故障した場合、修理や交換に高額な費用が発生する可能性があります。特に、古くなったエレベーターでは、大規模な部品交換が必要になることもあり、結果的にFM契約よりコストがかかる場合があります。

修理に時間がかかる場合がある

POG契約では、故障時の対応が後回しになることがあるため、修理に時間がかかることがあります。

FM契約の場合は、契約内で迅速な修理対応を受けられますが、POG契約では修理の手配や見積もりに時間がかかるケースがあります。特に、利用頻度の高いエレベーターで長期間の停止が発生すると、大きな影響が出るため注意が必要です。

エレベーターの利用頻度や築年数によってはFM契約より高くなる可能性がある

エレベーターの使用状況や築年数によっては、FM契約よりトータルコストが高くなることもあります。

例えば、築年数が古いエレベーターは部品の劣化が進んでおり、頻繁に修理や交換が必要になることがあります。そのたびに高額な費用がかかるため、結果的にFM契約の方がコストを一定に抑えながら安心して運用できるケースもあります。

FM契約のメリット・デメリット

FFM契約（フルメンテナンス契約）は、月々の費用は高めですが、修理費用を気にせず安心してエレベーターを運用できる契約です。ここでは、FM契約のメリットとデメリットを詳しく解説します。

FM契約のメリット

FM契約には、主に以下のメリットがあります。

修理費用が月額料金に含まれるため、追加費用が発生しない

FM契約の最大のメリットは、故障時の修理費用や部品交換費用が月額料金に含まれていることです。そのため、突発的な故障が発生しても、追加費用を支払う必要はありません。

エレベーターの部品は高額なものも多く、POG契約の場合は修理のたびに費用が発生します。しかし、FM契約ならどれだけ修理が発生しても一定の料金で対応してもらえるため、予算管理がしやすくなります。

年間の予算を把握しやすい

FM契約では、毎月のメンテナンス費用が固定されているため、年間の予算が明確になり、突発的な費用の心配がなくなります。

特に、管理費を厳密に計算する必要があるマンション管理組合や企業にとって、予算計画が立てやすいのは大きなメリットです。

トラブル対応がスムーズ

FM契約では、故障時の対応が迅速に行われるケースが多いです。

POG契約の場合、修理のたびに見積もりを取って発注する必要がありますが、FM契約ならすぐに対応してもらえるため、エレベーターの停止時間を最小限に抑えられます。
また、夜間や休日の緊急対応が含まれている契約も多く、利用者にとっての利便性も向上します。

FM契約のデメリット

FM契約には、主に以下のデメリットがあります。

月額費用が高め

FM契約は、月額料金がPOG契約よりも高く設定されているため、初期コストを抑えたい場合には負担が大きく感じるかもしれません。

特に、故障がほとんど発生しない新しいエレベーターの場合、月額料金を払い続けるメリットが少なく、結果的に割高になる可能性があります。

築浅のエレベーターには不向きな場合も

新しく設置されたエレベーターは、部品の劣化が少なく、故障リスクが低いため、FM契約を選ぶとコストが割高になる場合があります。

築年数が浅いうちはPOG契約で十分なケースもあるため、エレベーターの状態や使用頻度を考慮しながら契約を選ぶことが重要です。

どちらの契約を選ぶべきか？

エレベーターのPOG契約とFM契約は、それぞれメリットとデメリットがあります。どちらの契約を選ぶべきかは、エレベーターの使用状況や建物の築年数、予算などによって異なります。ここでは、どのようなケースでどちらの契約が向いているのかについて解説します。

POG契約が向いているケース

POG契約（パーツ・オイル・グリス契約）は、主に以下のようなケースで向いています。

築年数の浅いマンション

新しいエレベーターは部品の劣化が少なく、故障のリスクが低いため、POG契約の方がコストを抑えられることが多いです。

築年数が浅いうちは、定期的な点検と簡単なメンテナンスのみで十分な場合が多く、修理の頻度も少ないため、高額なFM契約を選ぶメリットがあまりないこともあります。

使用頻度の低いエレベーター

利用者が少なく、使用頻度が低いエレベーターであれば、部品の摩耗も少なく、故障のリスクも低くなります。

例えば、小規模なオフィスビルや低層マンション、あまり利用されない施設では、POG契約の方がコストパフォーマンスが良くなる可能性があります。

維持費を抑えたいオーナー

「とにかくメンテナンス費用を安くしたい」というオーナーには、POG契約が適しています。

FM契約は月額料金が高いため、費用負担が大きくなります。しかし、POG契約であれば、毎月の支出を低く抑えることができるため、予算を節約したい場合に適した選択肢になります。

FM契約が向いているケース

FM契約（フルメンテナンス契約）は、主に以下のようなケースで向いています。

築年数の古いマンションやビル

築年数が古くなると、エレベーターの部品が劣化し、故障のリスクが高まるため、FM契約の方が安心です。

古いエレベーターは修理や部品交換が頻繁に必要になることが多く、その都度費用が発生するPOG契約では、結果的にコストが高くなる可能性があります。FM契約なら、どれだけ修理が発生しても追加費用なしで対応してもらえるため、トータルの支出が安定します。

使用頻度の高いエレベーター

駅直結のビル、商業施設、オフィスビル、タワーマンションなど、エレベーターの利用者が多い場合は、FM契約の方が適しています。

使用頻度が高いと、部品の摩耗が早く、故障のリスクも高まるため、突発的な修理費用を避けるためにも、定額制のFM契約が安心です。

複数の物件を管理しているオーナー

賃貸マンションやビルを複数管理しているオーナーの場合、FM契約を選ぶことで管理の手間を軽減できます。

FM契約なら、故障時の対応をすべて業者に任せられるため、オーナーや管理会社の負担を大幅に減らせるというメリットがあります。複数の物件で突発的な修理対応が発生すると管理コストが増えるため、事前にコストを固定できるFM契約の方が運用しやすくなるでしょう。

POG契約の契約内容と注意点

POG契約を締結する際には、契約内容をしっかりと理解し、注意点を確認することが重要です。

契約期間と更新条件

POG契約の契約期間は通常1年～5年程度と設定されていることが多いですが、業者によって異なります。契約期間が短いほど柔軟に契約を見直せるメリットがありますが、長期契約の方が割引が適用される場合もあります。

また、契約が自動更新されるのか、更新時に条件の変更があるのかを必ず確認しましょう。特に、自動更新の場合は解約のタイミングを逃すと不要な費用が発生することがあるため、事前に確認しておくことが大切です。

契約内容の詳細な確認

POG契約には、定期点検や消耗品の交換は含まれますが、部品の交換や修理費用は契約に含まれていません。

そのため、以下のポイントを契約前にチェックしておきましょう。

• 定期点検の頻度はどれくらいか？（月1回、3カ月に1回など）
• 緊急時の対応は含まれているか？（夜間・休日の対応は可能か）
• どの消耗品が契約に含まれているか？（オイル・グリス以外の部品は？）
• 部品交換や修理費用が発生する場合の対応は？（見積もりの有無、対応スピード）

契約内容をしっかり把握しないと、いざという時に「想定以上の修理費がかかった」「緊急対応が受けられなかった」といったトラブルにつながる可能性があります。

見積もりと費用の確認

POG契約の月額料金は、エレベーターの種類や規模、設置年数によって異なります。

契約前には複数の業者から見積もりを取ることが重要です。業者によっては、点検項目の内容や、部品交換の費用が大きく異なるため、必ず比較しましょう。

特に確認すべきポイントは以下の3つです。

1. 基本料金に何が含まれているか？（点検・調整・消耗品の交換など）
2. 別途費用が発生するケースは？（部品交換、修理費用、緊急対応など）
3. 修理費用の目安はどれくらいか？（交換部品の単価、作業費など）

業者によっては、修理費用の概算を事前に提示してくれることもあるため、できるだけ詳細な見積もりを確認しておくと安心です。

信頼できる業者の選び方

エレベーターのメンテナンスは長期的な契約になるため、信頼できる業者を選ぶことが重要です。

業者選びのポイントは以下の通りです。

実績のある業者を選ぶ
長年の経験がある業者や、実績のある会社であれば、トラブル対応や保守の質が安定している可能性が高いです。

アフターサポートが充実しているか？
夜間や休日の緊急対応、故障時のレスポンスの速さなど、サポート体制を事前に確認しましょう。

口コミや評判をチェック
他のオーナーや管理会社の口コミを確認し、対応の丁寧さや修理のスピードについて情報収集するのもおすすめです。

見積もりを比較する
同じPOG契約でも、業者ごとにサービス内容や価格が異なるため、複数の業者から見積もりを取り、適正な価格かどうかを確認しましょう。

まとめ

エレベーターのPOG契約とFM契約、それぞれの違いやメリット・デメリットを理解することで、自社に最適な契約形態を選ぶことができます。コストを抑えつつ必要なメンテナンスを確保したいのか、それとも包括的な管理を任せて安心を優先するのか、目的に応じた選択が重要です。

契約内容の細かな条件や注意点も把握し、後悔のない選択をするために、業者との相談を重ねることが大切です。エレベーターは長期的な設備投資のひとつ。将来的なコストや安全性を考慮しながら、ベストな契約を選びましょう。

他にも、エレベーターの維持管理に関するポイントや、費用を抑えるための具体的な対策について知りたい方は、ぜひ関連記事もチェックしてみてください。最適なメンテナンス契約を結ぶための知識をさらに深め、安心・安全なエレベーター運用を実現しましょう！

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