豆知識
エレベーターのリニューアルに使える補助金は、多くの場合「工事のすべて」ではなく、戸開走行保護装置(UCMP)や地震時管制運転装置といった防災・安全性を高める工事に対して交付されます。
土台となる国の制度の補助率は計23%(国11.5%+自治体11.5%)ですが、各自治体が独自の制度を整備していないと使えず、地域差が大きいのが実情です。
この記事では、2026年7月時点で公式の交付要綱を確認できた自治体別の制度を比較表にまとめ、対象になる工事とならない工事、申請前の注意点までを整理します。
補助率・上限額・申請期限は年度ごとに変わるため、最終的な確認は各自治体の窓口で行ってください。
目次
エレベーターリニューアルに使える補助金は、原則として既設エレベーターの防災・安全性向上工事に対して交付され、リニューアル一式に必ず使えるわけではありません。
補助の対象になりやすいのは、戸開走行保護装置(UCMP)や地震時管制運転装置の設置、耐震補強、閉じ込めを防ぐリスタート運転機能の追加などです。
かご内装の意匠変更や、経年劣化のみを理由とした更新は対象外になりやすい点に注意しておきましょう。
制度の土台になるのが、国土交通省の「エレベーターの防災対策改修事業」です。
国土交通省の資料によれば、民間が実施する場合の補助率は国11.5%+地方公共団体11.5%=計23%が基本とされています(2026年7月時点。最新は各自治体へ)。
ここで最も重要なのが、同じ国土交通省の資料に「地方公共団体において制度の整備が必要」と明記されている点です。
つまり国の制度は、各自治体が独自の補助制度を作って初めて使えるもので、自治体が制度を設けていなければ利用できません。
だからこそ「国の制度だから全国どこでも同じように使える」という理解は誤りで、後述する自治体別の確認が欠かせません。
背景として、既設エレベーターのUCMP設置率はまだ高くありません。
国土交通省によると、令和6年度に定期報告されたエレベーターのUCMP設置率は約39.5%(約4割)にとどまります(国土交通省 2026年1月28日公表)
南海トラフ地震や首都直下地震への備えとして、防災改修を後押しする補助制度を活用するニーズは高まっています。
補助金・助成金・交付金は財源や交付する主体が異なりますが、申請者から見れば「工事費の一部が公的資金から支給される」点は共通しています。
エレベーターの防災改修では、国が自治体へ財源を渡す「交付金・補助金」の仕組みを土台に、各自治体が「補助金」「助成金」といった名称で制度を運用しているケースが一般的です。
名称の違いにこだわるより、自分の物件が使える制度が地元にあるかどうかを確認することが実務では重要になります。
ざっくり整理すると、次のような使われ方をします。
仕組みの流れは「国 → 自治体 → 申請者(管理組合・オーナー)」という三段構造です。
国が制度と財源の枠組みを用意し、自治体が交付要綱を定め、申請者が自治体へ申請します。
申請で最も大切な原則が、工事に着手する前に交付申請を行い、交付決定を受けてから契約・着工するという順序です。
多くの制度では、交付決定より前に契約・着工してしまった工事は補助の対象外になります。
「工事が終わってから申請すればよい」という進め方は避け、まず制度の確認から始めていきましょう。
2026年7月時点で公式に制度を確認できたのは、東京都港区・新宿区・東京都「とどまるマンション」事業・大阪市・堺市など、限られたエリアです。
アイニチが対応する全国の拠点エリアを調べたところ、多くの自治体ではエレベーター防災改修に特化した補助制度を公式ページ上で確認できませんでした。地域によって利用可否が大きく異なります。
注意
本表は2026年7月15日時点で各制度の公式ページ・交付要綱を確認し、2026年7月16日に各自治体の公式要綱で再照合した内容です。
補助率・上限額・申請期限・予算枠は年度と自治体で変動します。
申請前に必ず各自治体の最新の交付要綱・窓口でご確認ください。
数値を確認できなかった自治体は、推測せず「確認できず」と記載しています。
制度によって性質が異なるため、工事費に直接補助が出る制度(表1)と、融資や合意形成の検討活動を支える関連制度(表2)を分けて整理します。
| 制度名/実施主体 | 補助率・上限額 | 主な対象工事 | 申請期限・予算 | 公式ページ/確認日 |
|---|---|---|---|---|
| 国 エレベーターの防災対策改修事業(国交省/窓口は自治体) | 国11.5%+地方11.5%=計23%(民間実施時)/補助対象事業費の限度額:①〜⑤ 1台1,187.5万円、⑥⑦ 1台375万円(①と併せる場合312.5万円)。これは補助対象事業費の限度額であり、申請者への交付額そのものではありません | UCMP・地震時管制運転装置・耐震補強・釣合おもり脱落防止・主要支持部の耐震化・リスタート運転・自動診断/仮復旧(⑥⑦は①等が整備済み、または併せて整備する等の条件あり) | 自治体が制度を整備していないと利用不可 | 国交省/2026-07-15 |
| 東京都港区 エレベーター安全装置等設置助成事業 | UCMP 100%(最大300万円)/地震時管制運転装置・耐震対策 各2/3(個別上限なし)。助成総額は改修工事費総額の2/3以下 | 原則、新規のUCMP設置(設置済みの場合は地震時管制運転装置・耐震対策のみの申請可)・地震時管制運転装置・耐震対策 | 完了報告は2月末まで/年度予算 | 港区/2026-07-15 |
| 東京都新宿区 エレベーター防災対策改修支援事業 | 補助率2/3/各工事上限300万円(複数実施は合算) | 耐震補強・UCMP・地震時管制運転装置・リスタート/自動診断・仮復旧 | 完了報告2月末まで/年度予算 | 新宿区/2026-07-15 |
| 東京都 とどまるマンション エレベーター閉じ込め防止対策促進事業 | 補助率2/3/266万円 | リスタート運転機能・自動診断/仮復旧機能(UCMP・地震時管制・耐震は対象外) | 2026年(令和8年)度:2026年6月5日〜2027年1月15日/年度予算 | 東京都/2026-07-15 |
| 大阪市 エレベーター防災対策改修補助事業 | 23.0%/①〜⑤ 273.1万円、⑥⑦ 86.2万円(①と併せる場合71.8万円) | P波感知式の地震時管制・耐震補強・UCMP・釣合おもり脱落防止・主要支持部耐震化・リスタート・自動診断/仮復旧 | 2026年(令和8年)度:2026年4月1日〜12月18日・事前協議必須/年度予算 | 大阪市/2026-07-15 |
| 堺市 エレベーター防災対策改修補助金 | 23.0%/①〜⑤ 218.5万円、⑥⑦ 69万円、地震時管制運転装置と同時実施 57.5万円 | 地震時管制・耐震補強・UCMP・釣合おもり脱落防止・主要支持部耐震化・リスタート/自動診断・仮復旧 | 2026年(令和8年)度:2026年12月15日まで・事前協議は通年/年度予算 | 堺市/2026-07-15 |
各制度の主な対象建物(要件の抜粋)は次のとおりです。詳細要件は各制度の公式要綱でご確認ください。
工事費への直接補助ではありませんが、資金計画や総会に向けた検討を支える制度もあります。
次の2つは性質が異なるため、表1とは分けて整理します。
| 制度名/実施主体 | 内容・条件 | 対象 | 期限 | 公式ページ/確認日 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資 | 融資(補助金ではありません)。耐震/浸水対策/省エネ工事で金利年▲0.2%。保証利用で担保不要。補助金を受ける場合は、その額を除いた費用が融資対象 | 分譲マンション共用部分(EV含む)の改修資金(管理組合申込み) | 受付期限は住宅金融支援機構へ要確認 | 住宅金融支援機構/2026-07-15 |
| 千葉市 マンション再生等合意形成支援制度 | 合意形成の検討活動費(勉強会・意向調査等。EV工事費そのものは対象外)。補助率1/2以内・最大25万円 | 分譲マンション | 申請受付は2026年6月1〜12日(予定件数が定員に満たない場合は12月11日まで先着順)。活動・完了報告は2027年2月26日まで | 千葉市/2026-07-15 |
「全面リニューアル+確認申請を要する工事」の扱いは自治体で異なるため、次章で詳しく取り上げます。
以下のエリアでは、エレベーター防災改修に特化した補助制度を公式ページ上で確認できませんでした。
これは「制度が無い」と断定するものではなく、2026年7月15日時点で公式ページ上に確認できなかったという事実です。
国の制度は自治体の制度整備が前提のため、独自制度が未整備の場合や、別枠の制度がある場合があります。
最新の状況は各自治体の建築指導課・住宅政策課へお問い合わせください。
| エリア | 確認状況(2026-07-15時点) |
|---|---|
| 仙台市(宮城) | EV防災改修専用の補助は公式で確認できず。要問い合わせ |
| 千葉市(千葉) | EV工事費の直接補助は確認できず(合意形成の検討活動費のみ) |
| さいたま市(埼玉) | EV専用補助は確認できず(既存建築物の耐震補強助成は別枠) |
| 横浜市(神奈川) | EV防災改修専用補助は公式で確認できず(マンション耐震改修促進事業は別枠) |
| 川崎市(神奈川) | EV防災改修専用補助は公式で確認できず。要問い合わせ |
| 名古屋市(愛知) | EV防災改修専用補助は公式で確認できず(耐震改修助成は別枠) |
| 岡山市(岡山) | EV防災改修専用補助は公式で確認できず。要問い合わせ |
| 福岡市(福岡) | EV防災改修専用補助は公式で確認できず(住宅耐震改修補助は別枠) |
自分の自治体の制度を探すときは、「(自治体名) エレベーター 防災 改修 補助」「(自治体名) マンション 共用部 耐震 助成」といった語で公式サイトを検索し、見つからなければ建築指導課へ直接確認する方法が確認しやすい方法です。
補助金の対象になりやすいのは防災・安全性を高める特定の工事で、意匠変更や経年劣化のみの更新は対象外になりやすい、というのが基本的な線引きです。
工事の中身によって使えるかどうかが変わるため、まず自分が予定している工事がどちらに当たるかを整理していきましょう。
対象になりやすい工事は、国の制度で挙げられている次のような防災・安全工事が中心です。
一方で、対象外になりやすいのは次のようなケースです。
ここで押さえておきたいのが補助対象費用の区分・算定の考え方です。
リニューアル工事の中に対象工事と対象外工事が混在する場合、補助の対象になるのは防災・安全工事の費用分だけで、工事費全体に補助率が掛かるわけではありません。
「リニューアル総額の23%が戻る」と考えて資金計画を立てると、実際の交付額と大きくズレてしまう点に注意が必要です。
なお、この区分は単純な制度では概算式として使えますが、工事項目別の上限額・総額上限・消費税の扱い(消費税除外等)は各制度の要綱によって定められているため、最終的な額は要綱でご確認ください。
同じ「全面リニューアル」でも、確認申請を要する工事を補助の対象にするかどうかは、自治体によって扱いが分かれます。
工事方式を決める前の個別確認が欠かせません。
一次情報で確認できた実例を挙げます。
つまり港区では完全撤去による全面更新でも助成を受けられる一方、大阪市・堺市では同じ工事方式が対象外になります。
「全面リニューアルの方が手厚い補助が出る」という思い込みで工事方式を先に決めてしまうと、地域によっては補助の対象外となる可能性があります。
アイニチは工事を提供する立場ですが、全面更新が対象外になる自治体も実際にあります。
工事方式(部分改修か全面更新か)を決める前に、必ず自治体の制度と事前協議で可否を確認する——この順序を守ることが、補助の取りこぼしを防ぐことにつながります。
補助制度には分譲マンションを対象とするものが複数ある一方、港区のように一般建築物、とどまるマンション事業のように賃貸マンションも対象になる制度もあり、建物用途によって使える制度が変わります。
自分の建物がどの用途に当たるかで、使える制度や準備すべき書類が変わってきます。
分譲マンションで要件に合致しやすいのは、多くの制度が「長期修繕計画にエレベーターの改修が位置づけられていること」や「バリアフリー法の特定建築物であること」を要件としているためです。
共用部分を計画的に維持する仕組みが整っているマンションほど、制度の要件に合致しやすくなります。
一方で、賃貸住宅・オフィス・工場では次のような点に注意が必要です。
工場に設置されたエレベーターが対象になるかは、特定建築物の要件や自治体独自の対象用途によって異なります。
用途名だけで対象外と判断せず、必ず各制度の要綱で確認しましょう。
港区のように一般建築物も対象とする制度もあるため、自分の建物と用途で使える制度があるかは、次章以降で解説する探し方に沿って個別に確認していきましょう。
分譲マンションで補助金を活用するには、長期修繕計画へのエレベーター改修の位置づけが求められることが多く、制度や工事内容によっては総会決議による合意形成が必要になる場合があります。
補助金の申請主体は管理組合になることが多く、組合としての意思決定が整っていないと申請の入口に立てないケースもあります。
準備の流れは、おおむね次のようになります。
ここで見落としがちなのが、申請スケジュールと総会の時期の逆算です。
補助金は着工前申請が原則で、多くの制度に年度末の完了報告期限があります。
総会が年1回であれば、決議のタイミングを逃すと1年先送りになりかねません。
総会の議案化から逆算して、早めに制度確認と見積り準備を進めておくと準備がしやすくなります。
補助金だけで資金が足りない場合は、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資(管理組合申込み)という選択肢もあります。
耐震・浸水対策・省エネ工事を行うと金利が年0.2%引き下げられるため、補助金と融資を組み合わせた資金計画も検討する価値があります。
なお、補助金を受ける場合は、その補助額を除いた費用が融資の対象になります。
自治体制度は各自治体の公式サイトで探し、申請前の事前協議から着手するのが基本の流れです。
制度の有無や要件は自治体ごとに異なるため、窓口での事前協議を通じて「自分の物件と工事が対象になるか」を早い段階で確認しておきましょう。
一般的な申請フローは次のとおりです。

申請にあたっては、制度によって求められる書類が異なります。
制度によっては、メーカー発行書類・部材証明・図面・仕様書などが求められる場合があります。
必要書類は自治体や工事内容で異なるため、申請前に必ず確認しましょう。
アイニチが対応できる資料の範囲については、お問い合わせ時にご案内します。
エレベーターのリニューアル費用は、部分改修か全面更新か・機種・階数などの条件で大きく変わるため、一律の金額では示しにくいのが実情です。
そのうえで補助金が使えるのは、リニューアル費用全体ではなく防災・安全工事に当たる部分に限られる、という点を前提に自己負担を考える必要があります。
具体的な費用の目安は、条件別に整理した関連記事をご覧ください。
補助後の自己負担は、対象工事費に補助率を掛けて考えます。
目安となる式は「補助見込額=補助対象工事費 × 補助率(各制度の上限額まで)」で、工事費全体ではなく防災・安全工事に当たる対象工事分に対する計算になる点に注意してください。
ただしこれはあくまで概算で、実際には工事項目別の上限・総額上限・消費税の扱いが要綱で定められているため、最終的な補助額は各制度の要綱・窓口でご確認ください。
補助率が2/3の新宿区(各工事上限300万円)・とどまるマンション事業(上限266万円)や、マンションのUCMP設置を上限300万円まで補助する港区のような制度では、上限額の範囲内で自己負担がさらに小さくなる場合があります。
なお油圧式エレベーターについては、油圧式のまま更新する方がコストメリットが出る場合もあり、工事方式によって補助の対象範囲も変わります。
ロープ式への更新が常に最適とは限らないため、方式の選定は費用と補助の両面から個別に検討していきましょう。
アイニチでは、補助金の活用を視野に入れたエレベーターリニューアルについてのお問い合わせを承っています。
補助金は自治体ごとに要件も書類も異なり、着工前申請・事前協議・総会決議など段取りが多いため、工事の内容とあわせて申請準備についてもお問い合わせいただけます。
対応できる範囲は制度と物件によって異なるため、お問い合わせ時にご案内します。
お問い合わせいただける主な内容の例は次のとおりです(具体的な対応可否・範囲は制度と物件により異なり、確定情報は確認のうえご案内します)。
補助金の申請代行や書類作成の対応範囲は、制度と物件によって異なります。
まずは「自分の物件と工事で使える制度があるか」「どんな書類が必要か」といった点から、お気軽にお問い合わせください。
補助金活用リニューアルのご相談は無料です。お問い合わせフォームまたはお電話からどうぞ。
エレベーターリニューアルに使える補助金について、要点を振り返ります。
補助率・上限額・申請期限は、年度ごとに改正・受付終了となる場合があります。
この記事は2026年7月15日時点の一次情報(2026年7月16日に公式要綱で再照合)に基づいていますが、実際に申請する際は必ず各自治体の最新の交付要綱・窓口でご確認ください。
次の一歩として、まずは自分の物件が対象になる制度があるかを確認していきましょう。
制度の探し方や必要書類の整理、総会用の見積り準備でお困りの際は、アイニチのリニューアル相談をご利用ください。
工事と申請準備の両面から、取りこぼしを防ぐための確認を一緒に進めていきましょう。
エレベーターリニューアル・補助金活用のご相談は無料です。お問い合わせフォームまたはお電話からどうぞ。
当社スタッフがお客様の昇降機(エレベーター・簡易リフト・小荷物専用昇降機)の状況(使用年数、故障箇所、不具合)等を伺い、必要であればリニューアル・部品交換も視野に入れた最善策をご提案いたします。
アイニチは、仙台・千葉・埼玉・東京・神奈川・名古屋・大阪・岡山・福岡の全国9箇所の拠点だけでなく、専門会社とパートナーシップを結び、全国すべての都道府県をカバーしています。(一部離島を除く)全国どこでも迅速な対応が可能です。
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